本研究は、音響光学素子フィルターという、透過する光の波長を注入する高周波によって任意に設定できるフィルターを用いて、野外調査用の画像分光装置を開発するとともに、月・惑星探査のための運用方法を研究する事を目的としている。本年度は、可視・近赤外領域の音響光学素子、およびコンピューター制御の可変高周波発生制御装置を購入し、光学レンズ系を配置して、画像分光装置の試作を行った。画像取得には研究室既存の可視光用のCCDカメラを仮に用い、デジタイズ装置を用いて、コンピュータにデジタルイメージとして取り込めるようにした。音響光学素子は周波数の設定毎に分光画像の位置がシフトするため、プリズムを用いた光軸の修正を試みた。しかし、その方法ではシフトの抑制効果が不十分である事がわかったので、主として自作の画像変形ソフトによって各周波数の画像を対応させる事にし、ソフトを作成中である。現在の光学系は色収差や結像の不鮮明さなどの問題があるので、来年度は光学系の質の向上とともに、CCDを近赤外対応のものに置き換え、野外に持ち出す予定である。本年度の試作で光学設計上の留意すべき点、例えば光路の調整や迷光処理の困難さ等や、月・惑星探査で使用する際の強度、電力、ノイズ対策等設計上の問題点が整理された。宇宙開発事業団、宇宙科学研究所、国立天文台が共同で企画中のセレーネII計画という2006年打ち上げ目標の月探査計画がある。この探査計画で月に投入される可能性のある無人観測車(ローバー)に、本研究の音響光学フィルターが採用される可能性があり、本年度の研究で得られた知見をもとに、3月に国立天文台で行われる「次期月探査シンポジウム」において東京大、宇宙科学研、宇宙開発事業団、JSF、明大のスタッフと共著で分光カメラの有効性と課題を発表する予定である。
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