本年度は含水高圧相、並びに地球内部物質に取り込まれている水の存在状態、特に水素結合の強度に関してについて、主に赤外スペクトルと中性子回折によって実験的なデータを蓄積することができた。来年度は高圧含水相についてはより高圧側で安定となるPhaseDの研究に取り掛かるとともに、天然ダイヤモンド中の包有物に関しては、地球深部のfluidの化学組成に制限条件をつけるべく実験を重ねる予定である。 1. ニューヨーク州立大学のParise教授とともに、金属水酸化物の高圧下中性子線回折測定結果の詳細な解析を行い、金属水酸化物の高圧下での振る舞いに水素結合だけでなく、水素原子間の反発が重要であることを明らかにした。この結果は以下の含水珪酸塩鉱物の高圧下での挙動を理解するための試金石となる。 2. 含水高圧相のPhaseAについては、高圧下での中性子線回折の測定が終わり、結晶ないに取り込まれている二つの水素原子を取り巻く水素結合強度について、大気圧下と高圧下での比較から明確な議論をすることができた。今後は、高圧下でのX線結晶解析を進め、複雑な構造を持つPhaseAの高圧下での構造変化を総合的に理解してゆく予定である。 3. 天然ダイヤモンド中に含まれる水の水素結合については、昨年度から引き続き研究を続行しており、現在のところ氷の高圧相がダイヤモンドに含まれていること(学会発表済み、投稿準備中)、さらに水素結合強度をプローブとしたin situ salinity測定法の開発を現在行っている。
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