古環境および古気候解析のためにバイカル湖堆積物コア試料を地球化学的手法を用いて研究し、主に次のような結果を得た。 (1) 温暖期(完新世)と寒期(最終氷期)からのバイカル湖堆積物中に含まれる長鎖直鎖アルカン(陸上植物のバイオマーカー分子)の化合物レベル安定炭素同位体比組成を測定した。これはバイカル湖付近でのC3およびC4植物などの陸上での植生分布が気候変動によってどのように影響を受けているかを理解しようとするものである。本研究での結果は寒期でさえC3植生が優位であったことがわかり、古植生を支配する環境要因に新しい考察を加えた。本研究の結果を論文として国際専門誌に投稿した。 (2) 過去80万年間のシベリア大陸内部の気候システムを支配するメカニズムを明らかにする目的で、バイカル湖堆積物のスペクトル解析を行った。その結果、バイカル湖付近の古気候を支配する過程について現在までの説と異なる新しい結果を得た。本研究での結果は、従来言われてきたミランコヴィッチサイクル仮説の10万年サイクルの起源について新しい展開を与えるものである。現在、本研究の結果を投稿論文として準備中である。
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