本研究は、電荷移動錯体における三次非線形光学特性を系統的に見積もり、電荷移動相互作用を利用した非線形光学材料の分子設計指針を導くことを目的とした。 当初の研究計画では、結晶試料の非線形光学定数測定は困難が大きいと考えたが、粉末結晶を用いた場合でも、非線形光学定数を測定する事に目処が立ったので、主として粉末飼料に関する研究を展開した。 粉末試料の非線形光学定数を簡便に測定できる装置を試作・開発した。具体的には、全反射配置下での光第三高調波の観測(THEW法)、及び、四光波混合による位相共役波発生の観測(FWMEW法)という二つの手法を開拓した。その装置の性能確認のため、電荷移動(金属-ジメチルグリオキシム)錯体薄膜の三次非線形光学定数を測定し、これら方法が電荷移動錯体の非線形光学定数評価法として適当であることを示した。 次に、フタロシアニン誘導体粉末結晶の非線形光学定数をFWMEW法により測定し、粉末結晶を用いた非線形光学定数評価に対する検証を行った。 加えて、陽イオン性を持った化合物が、LB法の応用により粘土鉱物の上に配列することを新たに見いだした。そこで、ツビッターイオン性のTCNQ類縁体をモンモリロナイト単一層上に配列させたハイブリッド膜を作製し、電荷移動量と二次の非線形光学特性の関係に関する系統的な調査にも着手した。このTCNQ類縁体については、as grownな粉末結晶を用い、上述の方法で三次非線形光学定数も求めており、二次・三次それぞれの非線形光学挙動の関連についての研究も進めた。
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