1. これまでに確立した光検出によるドップラーフリー光・光二重共鳴偏光分光法を用いて、アルカリ金属ニ原子分子であるCs@S22@E2分子およびKRb分子の励起状態の観測を行った結果、以下のことが明らかとなった。 (1) Cs@S22@E2の励起状態であるC@S11@E1Π@S2u@E2状態および近傍に存在する(2)@S13@E1Π@S2u@E2状態について、スペクトル線位置のシフトならびに線幅の変化を解析することにより、状態間相互作用および前記解離機構に関する詳細な知見を得ることができた。特に、シフトの大きな領域では相互作用の相手状態である。1@S2u@E2状態[(2)@S13@E1Σ@S1+@E1@S2u@E2と(2)@S13@E1Π@S2u@E2状態が混合した状態]の存在を見出すことができた。 (2) KRb分子の励起状態である@S11@E1Π状態について、(1)@S11@E1Πおよび(2)@S11@E1Πの2つの状態の存在を明らかにし、各状態の分光定数ならびにポテンシャル曲線を決定した。 (3) KRb分子において観測された2つの@S11@E1Π状態間における状態間相互作用の存在を見出すとともに、その相互作用における両状態の波動関数の符合によってスペクトル線の強度異常が生じる(干渉効果)ことを発見した。 (4) KRb分子の(1)@S11@E1Π状態の高振動準位においてスペクトル線幅の広がりを見出し、線幅の広がりが前期解離によるものと帰属した。 2. イオン検出を目的としたステンレス製ヒートパイブセルを自作した。まず、アルカリ金属ニ原子分子のスペクトルを光検出によって測定してセルの性能評価を行い、次にイオン検出部の取り付けを行った。現在、アルカリ金属原子のイオンシグナルの検出を行っている段階である。次年度に分子の検出まで性能をあげていく計画である。
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