研究概要 |
前年度に引き続き,Cu_6PCal_5X(Cal:S,Se;X:Cl,Br,I)は,高純度の原料を化学量論化に混合し,石英ガラス管に真空封管した後,電気炉中700℃で1〜2週間程度加熱することにより合成した。試料の同定は,粉末X線回折により行なった。回折パターンのRietveld解析の結果,Cu_6PSe_5X(X:Br,I)の結晶構造を明らかにした。さらに電気伝導性を調べるために,直流・交流電気伝導度の測定をそれぞれの試料について行ない,Seの化合物はSの化合物に較べて,電子伝導性が高いことが分かった。また,研究室既設の超伝導磁石(6.34T)およびMatec社製パルス型分光器を用いて,液体窒素温度から室温までの温度範囲についてCu_6PSe_5X(X:Br,I)の^<63>CuNMRスペクトル測定を行なったところ,Cu_6PSe_5Iでは,スペクトルに顕著な温度変化が見られ,銅イオンを電荷坦体とするイオン伝導体であることがわかった。Cu_6PSe_5Brでは,NMR測定からイオン伝導性を確認することが困難であったため,輸率測定を行なうことにより銅イオンの拡散を見出した。これらの成果を分子構造総合討論会(大阪)で発表した。さらに,論文をInorg.Chem.に投稿準備中である。 また,新たな混合伝導性物質を探索する目的で,CuInP_2Cal_6(Cal:S,Se)という組成の化合物を合成した。特にCuInP_2Se_6は銀白色の金属光沢を示す化合物で,混合伝導性を有することが期待される。
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