研究概要 |
金属クラスター/超微粒子の特異的な光学特性として価電子系の集団励起に伴う表面プラズマ吸収が知られている.最近になってようやく、この表面プラズマ吸収のサイズ効果が価電子のはみ出し(Spill-out効果)によって理解されるようになった.価電子が表面にはみ出したような金属クラスターの描像は、その化学的特性において大変興味深いでものであるにも関わらず、その表面での化学反応性については未だ知識の蓄積に至っているとは言えない.本研究の目的は、表面環境に対し鋭敏な表面プラズマ吸収を化学的プローブとして用いるというアイデアのもと、金属クラスターの光学特性において最も研究の進んだ系であるアルカリ金属を選び、そのナノクラスターの表面・界面における化学的反応性を明らかにすることである.この研究目的に対し、今年度は以下のような成果が得られたので報告する. 1.クラスター/超微粒子の生成源として知られているガス凝集法に改良を施し、新しい金属ナノクラスターの反応分光装置を試作した.金属クラスターの成長領域に反応ノズルを設置することにより、平均粒径を制御して、金属ナノクラスターの反応を観察することを可能にした. 2.反応ノズル-ガス凝集法によりNaナノクラスター(平均粒径1nm)と電子親和性分子Cl_2の反応に関する研究を試みた. Cl_2の存在下においてNaナノクラスターからなるエアロゾルの光吸収は、600nm付近に新たな吸収帯を示した.NaCl結晶中において生成するX中心(コロイド中心)との類似性は、新規なNaCl被覆Naナノクラスターの生成を示唆する結果である. 本研究では、誘電体被覆金属粒子模型によりこの結果を説明できること明らかにしたとともに、Naナノクラスター芯とNaCl殻間における新規なクラスター内電荷移動の存在を見出した. これらの結果は、平成10年度内にChemcal Physics Letters誌へ投稿される予定である. [Title:Optical absorptions of the X-center type sodium nanoclusters in the gas-aggregation technique with a reactant nozzle,M.Sanekata and I.Suzuka]
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