極めて最近、自己組織化単分子膜を伴う金属ナノ粒子や金属ナノ粒子自身が高度に自己組織化した分散膜の調製法が発見されるとともに、これらの金属ナノ粒子材料において単電子輸送現象の発現が見出されており、単電子トタランジスタの実現化が盛んに検討されている.これら全てのトピックスに対し、金属ナノクラスターの表面・界面における被覆層との相互作用は、これら金属ナノクラスター材料の電子的特性を左右する重要な要因として考えられる.しかしながら、現状ではこの界面相互作用の微視的描像が充分明らかになっているとは言えない.金属クラスターの光学特性において光励起に伴う価電子の集団運動(表面プラズモン共鳴)が知られており、この共鳴状態は金属ナノクラスターの表面環境に対し鋭敏に応答すると考えられる.このことから本研究では表面プラズモンを化学的プローブとして用いることによって金属ナノクラスターと被覆層との界面相互作用を解明する、という着想に基づき、金属ナノクラスターと含塩素分子との反応を試みた.以下のような界面相互作用に関する知見を得られたので報告する. 1.反応ノズル-ガス凝集法の開発より、表面被覆を施した金属ナノクラスター(粒径約1nm)の生成を可能とした(Chemical Physics Lettersに発表済). 2.Naナノクラスターと電子親和性分子Cl_2との反応により、NaCl被覆Naナノクラスターを生成し、X中心型光吸収帯を新たに観測した.また誘電体被覆金属ナノ粒子模型の提案によりNaナノクラスター核からNaCl被覆殻への電荷移動の存在を明らかにした(Chemical Physics Lettersに発表済). 3.Naナノクラスターと含塩素分子CH_<4n>Cl_n(n=1-4)の反応を行なったところ、Cl_nの系と同様、Naの表面プラズマ吸収帯から赤方移動した新たな光吸収帯を見出した.更にNaナノクラスター核と被覆殻間の電荷移動量が微視的な界面構造を反映してCl原子数に依存する、という新たな現象論を見出した(Chemical Physics Lettersに現在投稿中).
|