研究概要 |
アセチレン結合はルイス酸や遷移金属錯体などにより活性化されることが知られている。しかしそれらは、ひとつのルイス酸または遷移金属錯体がアセチレン結合の二つのπ-結合のひとつに1対1で配位し活性化するものであり、二つのルイス酸または遷移金属錯体が、それら二つに同時に配位する2対1による活性化の例はこれまで知られていない。そこでまずモデルを用いた二点配位型ルイス酸のデザインを行い、続いてそれに基づき種々のジオール化合物をテンプレートとして用い、これに様々なタイプのルイス酸を二当量加えることにより、一分子内に二つの金属部位を有する二点配位型ルイス酸を調整した。そしてまず予備実験として、アセチレンよりもルイス塩基性の高いカルボニル化合物を基質として用いて、その二重活性化の効果を調べることにした。その結果、1,8-dihydroxyanthraquinoneとTi(O^iPr)_4から調整したビスチタニウム錯体が極めて高い活性化効果を有していることがわかった。例えば、このビスチタニウム錯体を触媒量用いることにより、4-t-butylcyclohexanoneを室温6時間という穏和な条件下でBu_3SnHにより収率よく還元することに成功した。1-hydroxyanthraquinoneから調製したモノチタニウム錯体、またはTi(O^iPr)_4そのものを用いた対照実験では、生成物は極わずかしか得られないことから、ビスチタニウム錯体がカルボニル基に二点配位し、カルボニル基を二重活性化していることがわかる。現在この二点配位型ルイス酸を用いてアルキンの活性化について検討中である。
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