今年度は、これまでに合成した官能性フェニルポリシランのUVや蛍光スペクトルを検討した。その主な結果は以下にまとめられる。なお、初期の目的である3次元的構造を有するケイ素高分子の合成は、前駆体の合成が困難であり、達成されなかった。 1.官能性フェニルポリシランのUVスペクトル UVスペクトルには2つの吸収帯が現れ、その吸光係数の比に置換基効果があることが明らかになった。これまでに、脱水素縮合で合成されたフェニルポリシラン類のUVスペクトルについては詳しい報告が無かったが、他の方法で合成されたポリシランのUVスペクトルとの比較から、これら2つの吸収帯は、σ->σ^*およびσ->π^*遷移と推定される。電子求引基が置換したフェニルポリシランでは、σ->σ^*に帰属される吸収帯の吸光係数が大きく、電子供与基置換のフェニルポリシランのそれは逆に小さくなった。これは、σ->σ^*およびσ->π^*遷移が相互作用しており、その相互作用の程度に置換基の影響が現れるためと解釈される。 2.蛍光スペクトル ポリシランの励起状態の性質を調べるために、蛍光スペクトルを測定した。どのポリシランの場合にも、可視部に弱い発光が観測され、その波長には温度依存性や置換基効果が見られ無かった。このことは、脱水素縮合で得られたポリシランにはわずかながら分岐構造があり、σ->σ^*励起状態から、分岐構造由来のより低い励起状態へのエネルギー移動が起こり、そこから発光が起こるためと考えられる。
|