イソプロピルジフェニルクロロシランから3ステップで環状シラノールである[i-Pr(OH)SiO]_4(1)を合成した。X線結晶構造解析の結果、得られた化合物は単一物であり、オールシス型の構造を有することが明らかになった。この化合物は通常の有機溶媒からでは結晶化せず、水を含んだ溶媒から再結晶することにより単結晶を得た。格子内で球状のクラスタを形成しており、水4分子とシラノール4分子が水素結合をしていた。この結晶は空気中では不安定であり容易に水を失って白濁する。最近Feherらによって同一の骨格を有するフェニル置換のシラノールの構造が発表されたが、その構造もオールシス体であった。加水分解・脱水縮合の段階で水素結合を形成しながら反応が進行するため、オールシス体ができやすいものと考えている。 現在種々の水素結合能のある化合物と1の共結晶化を試みているが、これと平行して得られたシラノールを原料にして新規シロキサンの合成を行った。これまでに我々は、シラノールをDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)と反応させることによりシロキサンを得ることを発表しているが、それをこの化合物に適用した。その結果1とDCCの反応により2分子が上下に縮合したオクタシルセスキオキサンi-Pr_8Si_8O_<12>を収率よく得ることができた。これまでにオクタシルセスキオキサンはモノシランやジシランから作られていたが、今回の結果により環状シラノールが中間体として存在する可能性を示すことができた。また[i-Pr_2Si(CI)]_2Oとの反応によりはしご状の3環式ラダーシロキサン合成にも成功した。得られた化合物はともにX線結晶構造解析で構造を定めた。
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