エポラクタエンは真菌Penicillium sp.BM-1689Pの培養液から単離、構造決定された化合物であり、ヒト神経芽腫細胞(SH-SY5Y)に対し神経伸長作用を示す、多置換トリエン部位とエポキシラクタム部位を有する化合物である。天然からはほとんど得られず、生物化学的研究を行うために、化学合成することが強く求められていた。筆者は昨年度の研究によりエポラクタエンの初めての全合成を達成したが、いくつか問題のあるステップが含まれていた。具体的にはこれまでのルートではβケトアミドと光学活性アルデヒドとのKnoevenagel反応を鍵反応としていたが、本反応は収率が低く、またシス、トランスの立体選択性も低い。今回βケトアミドに変えβケトニトリルを用いることで、収率、選択性ともに大幅に改善することができエポラクタエンの実用的合成法を確立することができた。
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