研究概要 |
分子内の適当な位置に二カ所シリレン(ビスシリレン)を発生させることさえ出来ればその後1,2-シリル転位が段階的に起きテトラシラブタジエンが生成するものと考えられる。本年度はヘキサメチルテトラシラン-1,1,4,4-テトライル(1.4-ビスシリレン)を発生させ、1,2-シリル転位によりテトラシラ1,3-ブタジエンの生成を検討した。 1,4-ビスシリレンの前駆体として7-シラノルポルナジエン誘導体を合成し、封管中、溶媒としてベンゼンを用い、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン存在下、220℃で2時間熱分解反応させた。反応後、1,4-ジフェニルナフタレンとともに、1,4-ビスシリレン、シリル転位が起きたジシレニウムシリレン、およびさらにもう一度シリル転位が起きたテトラシラ-1,3-ブタジエンの捕捉生成物の生成を確認した。また、熱分解反応の初期段階に1,4.ビスシリレンが生成しているのか確認するため、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン存在下、400゚Cで窒素気流下における1の熱分解反応を低い転換率で行った。この場合、反応後、1,4-ビスシリレンの捕捉生成物である6のみが観測された。このことから1の熱分解ではまず1,4-ビスシリレンが生成し、これを経由してシリル転位が進行していると考えてよい。 またこのように段階的にシリル転位しているとすれば、それらの捕捉生成物の生成比は捕捉剤であるジエン濃度に大きく依存しているはずである。実際、熱分解生成物のジエン濃度依存性を確かめたところ、ジエン濃度を低くすると、テトラシラ-1,3-ブタジエンの捕捉生成物の生成比が大きくなり、ジエン濃度を高くした場合では、ビスシリレンの捕捉生成物6の生成比が大きくなった。以上の結果から、1,4-ビスシリレンからの段階的なシリル転位によってテトラシラ-1,3-ブタジエンの熱的生成を確認することができた。
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