研究概要 |
本研究はポリ酸イオンの結晶化に与える水素結合の影響を明らかにし、合理的な結晶化法を探索することを目的としている。申請時点ですでに[(CH_3)_4N]_4[H_2V_<10>O_<28>]・4H_2O,[(C_2H_5)_4N]_3[H_3V_<10>O_<28>]・H_2O,[(n-C_3H_7)_4N]_3[H_3V_<10>O_<28>]・4H_2O,[(n-C_3H_7)_4N]_3[H_3V_<10>O_<28>],[(n-C_3H_7)_4N]_2[H_4V_1O_<28>],[(n-C_4H_9)_4N]_3[H_3V_<10>O_<28>],[(n-C_4H_9)_4N]_2[H_4V_<10>O_<28>]などの単結晶が得られており、水素結合により橋掛けした二量体構造や無限鎖状構造などが生成すること、また、二量体構造にも様々な異性体が存在することを明らかにしていた。以上の予備的実験は水溶液中から析出する結晶についてのものであった。今年度の研究では有機溶媒から析出する結晶に対象を広げ、有機溶媒を結晶溶媒として捕り込んだデカバナジン酸結晶中での水素結合について研究を行った。その結果、[(n-C_5H_<11>)_4N]_3[H_3V_<10>O_<28>]・2(CH_3)_2CO,[(n-C_5H_<11>)_4N]_8[H_3V_<10>O_<28>]_2[H_4V_<10>O_<28>]・7C_4H_8O_2,[(n-C_6H_<13>)_4N]_2[H_4V_<10>O_<28>]・4C_4H_8O_2,[(C_6H_5)_4P]_2[H_4V_<10>O_<28>]・8CH_3OH,[(C_6H_5)_4P]_2[H_4V_<10>O_<28>]・3C_2H_5OHなどの結晶が得られた。結晶構造解析の結果、アセトンのように水素結合アクセプターとならない溶媒を取り込んだものでは二量体構造が優先的に結晶化し、1,4-ジオキサンのように水素結合アクセプターとなる溶媒を取り込んだ結晶では単量体構造が結晶化、アルコールのように水素結合ドナーとしてもアクセプターとしても働くものを取り込んだ場合には結晶溶媒を巻き込んだ水素結合網が生成していることが明らかとなった。
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