研究概要 |
本研究では種々の分光法を用いて、再酸化過程を中心に依然不明な点の多いアミン酸化酵素の反応機構を明らかにするため、次の研究を行った。 1. 設備備品として購入した超低温冷凍庫を用いて精製保存した土壌細菌(Arthrobactor globiformis)及び麹カビ(Aspergillus niger)由来アミン酸化酵素(AGAO,AO-1)において、酵素(AGAO,AO-1)+基質+COと再酸化させた酵素とのRT-IR差スペクトルにおいてそれぞれ2078、2085cm^<-1>にCO伸縮振動によるバンドを観測した。吸収スペクトルではCO付加させると433、333nmに新たにブロードの吸収が観測された。ESRスペクトルではCOを付加させるとセミキノンラジカルのシグナル強度が強くなり、Cu(II)のシグナル強度が弱くなったことから、Cu(II)-アミノキノール【tautomer】Cu(I)-セミキノンの平衡がCu(I)側に移行することが判明した。またCOを付加させた際、セミキノンラジカルの波形が若干変化したが、^<12>C^<16>Oと^<13>C^<180>ではラジカルの波形が同じだったため、COはセミキノンには直接配位せずCu(I)に配位することにより、キノンと相互作用していることが推測された。これらの結果はアミン酸化酵素と一酸化炭素との結合に関するはじめての知見である。 2. [Fe(CN)_6]^<4->から酸化型チトクロムc(cytc)への電子移動反応はアスパラギン酸ペプチドによって阻害されたのに対して、[Fe(CN)_6]^<4->から酸化型プラストシアニン(PC)への電子移動反応はリシンペプチドによって促進した。これらの現象はアスパラギン酸ペプチドがcytcと、リシンペプチドが[Fe(CN)_6]^<4->やPCと静電的に相互作用することにより複合体を形成したためと解釈した。これらの知見は分子認識を伴うタンパク質分子の反応の理解に有用な情報である。 以上の研究成果はアミン酸化酵素の反応機構の解明に基礎情報を提供するものである。
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