研究概要 |
二トリロ三酢酸を配位子とする硫黄架橋不完全キュバン型モリブデンクラスター錯体[Mo_3(μ_3-S)(μ-S)_3{N(CH_2COO)_2(CH_2COOH)}_3]^<2->にCd金属を反応させ、{{N(CH_2COO)_2(CH_2COOH)}_3Mo_3(μ_3-S)_4Cd(μ_3-S)_4Mo_3{N(CH_2COO)_2(CH_2COOH)}_3]^<4->(A)の合成に成功、[Co(H_2O)_6]_2[{N(CH_2COO)_2(CH_2COOH)}_3Mo_3(μ_3-S)_4Cd(μ_3-S)_4Mo_3{N(CH_2COO)_2(CH_2COOH)}_3]22H_2O(A')として良好の単結晶を得てX線構造決定に成功した。溶液中のAは近赤外部1235nmにモル吸光係数10900M^<-1>cm^<-1>の特徴的な吸収極大をもつ。Aの電子状態をDV-Xα分子軌道法により計算し、実験での1235nmの吸収極大が64a_<1g>(HOMO)から61a_<2u>(LUMO)への遷移であると帰属した。またジエチルジチオリン酸を配位子とする[Mo_3(μ_3-S)(μ-S)_3{μ-S_2P(OC_2H_5)_2}{S_2P(OC_2H_5)}_3(CH_3CN)]にCd金属を反応させ、[(CH_3CN){S_2P(OC_2H_5)}_3{μ-S_2P(OC_2H_5)_2}Mo_3(μ_3-S)_4Cd(μ_3-S)_4Mo_3{μ-S_2P(OC_2H_5)_2}{S_2P(OC_2H_5)_2}_3(CH_3CN)](B)の合成に成功、良好の単結晶を得てX線構造決定に成功した。溶液中のBは近赤外部856nmにモル吸光係数8060M^<-1>cm^<-1>の特徴的な吸収極大をもつ。A'とBのX線構造を比較すると、AのMo-Cd距離はBのそれより0.23Å長く、また近赤外部吸収極大波長では、AがBより379nm赤移動している。X線構造よりA,Bの骨格部分の座標を求めてDV-Xα法により遷移エネルギーを計算したところ、実験で吸収極大波長が移動する原因が判明した。
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