研究概要 |
伝導電子系の構成分子としてジチオレン系金属錯体Ni(dmit)_2を用い、超分子カチオン系にはクラウンエーテル分子に包接されたアルカリ及びアルカリ土類金属イオン(M^+)を用いた試料の作製について検討した。新規錯体として、Ca^<2+>イオンを含む単結晶試料を新たに5種類得る事に成功し、錯体の結晶構造を明らかとした。これらの錯体は、いずれもイオン伝導性カラムを有さない絶縁体であったが、井桁状の特異的なNi(dmit)_2分子の積層形態が観測され、分子磁性体として次年度に着目する。また、既存のLi^+_x(15-crown-5)[Ni(dmit)_2]_2錯体を用いたイオン伝導性の評価を行った。室温で数100 Scm^<-1>の電子伝導性を有する高伝導性錯体である為に、Li金属/Li+-ポリエチレンオキサイド(PEO)lサンプル/Li^+-PEO/Li金属型のサンドイッチ構造を持った電子伝導ブロック型イオン伝導度セルを用いて測定を試みた。その結果、Li^+(15-crown-5)[Ni(dmit)_2]_2錯体で、〜10^<-6>Scm^<-1>(330K)のイオン伝導性が確認され、有機伝導体単結晶中のイオン-電子複合輸送性を明らかとした。さらに、これら錯体のイオン-電子複合輸送性を、広い温度(4〜300K)・周波数(100Hz〜10MHz)をパラメータとして測定が可能な系の構築を新たに行った。Li^+,Na^+,NH_4^+,Cs^+イオンを含むイオンチャンネル型錯体のイオン-電子輸送特性の系統的な評価を試みる。
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