研究概要 |
ジチオレン系金属錯体Ni(dmit)_2を用いた分子錯体の作製について検討を試みた。カウンターカチオンとして、crown ether分子に包接されたアルカリ土類金属イオンを超分子カチオンとして用いた。その結果、Ca^<2+>(12-crown-4)_2[Ni(dmit)_2]_2(1),Ca^<2+>(15-crown-5)_2[Ni(dmit)_2]_2(CH_3CN)_<0.7>(2),Ca^<2+>(A18-crown-6)[Ni(dmit)_2]_2(CH_3CN)_2(3),and Ca^<2+>(DA18-crown-6)[Ni(dmit)_2]_2(CH_3CN)_2(4)を、新規な単結晶試料として得る事に成功した。これらの錯体は、いずれもイオン伝導性カラムを有さない絶縁体であったが、分子磁性体の観点から研究を試みた。錯体1の磁化率の温度依存性は、キュリー・ワイス的であり、錯体2では約20OKでスピン数が半減する磁気的な相転移が観測された。また錯体3と4では、1次元Heisenberg反強磁性鎖に由来する磁気的挙動が見られた。以上の様にCa^<2+>(crown ethers)超分子カチオン構造に依存して、Ni(dmit)_2分子の持つスピン構造を制御することが可能である。2価のアルカリ土類イオンを用いた場合には、イオンチャンネル構造を有する単結晶試料が得られなかったが、これは2価イオンが強くcrown etherと配意することで閉じた超分子カチオン構造を形成するためである。
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