研究概要 |
酸化物半導体は、紫外光照射による電子・正孔対の形成により、極めて強い酸化・還元力を発し、様々な化学反応を誘起することが知られている。本研究は、単結晶酸化亜鉛(ZnO)表面(バンドギャップ3.2eV)における吸着CO分子の光誘起酸化反応の素過程を明らかにすることを目的としている。 表面第一層が同数のZnとO原子からなるZnO(101^^-0)表面にCOを曝露すると、COは炭素原子を介して表面上に分子状吸着することが知られている。吸着COは、ZnO表面の加熱に伴い、表面を還元しながらCO_2に酸化され脱離することが昇温脱離実験より確認された。この時の脱離温度は475K(脱離エネルギー1.3eVに相当)であった。全ての吸着COがCO_2に酸化されることから、COは表面O原子と比較的強い結合を形成していることが示唆される。 CO酸化により形成されたCO_2の脱離反応は、ZnOのバンドギャップより大きいエネルギーを持つ紫外光(3.40eV)をCO吸着ZnO表面に照射することでも観測された。紫外光源としては水銀ランプを用い、フィルターにより任意のエネルギーを持つ光のみ取り出して、表面に照射した。CO_2の脱離は、バンドギャップより小さいエネルギー2.84eVの紫外光照射では観測されなかった。このことは、CO酸化・脱離反応が、基質ZnOの光吸収遷移により誘起されたことを示している。紫外光照射前後の昇温脱離CO_2量の比較から、CO光励起酸化反応に対する反応断面積は、ZnO(101^^-0)表面に形成された酸素欠陥サイトに吸着したCOの方が、欠陥のない表面に吸着したCOより、約1.5倍大きいことが分かった。 昇温脱離実験より、表面に吸着したCO分子の全てが酸化され、表面-吸着子間に強い相互作用があることが示唆されるので、吸着CO分子は表面において擬似CO_2分子を形成していると考えられる。紫外光照射によるCO酸化・脱離反応では、光吸収による基質励起エネルギーがこの擬似CO_2分子に遷移することで生ずると予想される。CO光励起反応は、次式のように進行すると考えられる。 CO+ZnO+Zn(CO_2),Zn(CO_2)+hν→ZnVo+CO_2,Vo:酸素欠陥
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