研究概要 |
(1) 誘電率測定 固体表面吸着系でも使用できる誘電率測定装置を作製した.測定に用いたインピーダンス・アナライザ(Hewlett Packard社製・4192A)はGP-IBケーブルでノートパソコンと接続されており,自動計測が可能である.現時点での測定可能な周波数範囲は10^2-10^6Hz,温度範囲は80-350Kである.装置の性能を調べるため,ソルビトールおよびエタノールの誘電率測定を行ったところ,文献値とほぼ一致する結果が得られた.この誘電率測定装置を用いて,MCM-41メソ孔に毛管凝縮させたエタノールの複素誘電率測定を行った.その結果,メソ孔中のエタノール分子はバルクのそれに比べ遅い回転運動をしており,回転速度にかなり分布があることがわかった. (2) NMR測定 MCM-41メソ孔中に吸着させたベンゼンのH-NMR測定を行った.縦緩和時間の温度依存性を見ると2つの極小が存在することがわかった.これはメソ孔中のベンゼンの回転運動モードが2つあることを示唆する結果である.また,融解に伴うスペクトル,縦緩和時間の急激な変化は観測されなかった. (3) DSC測定 メソ孔直径2.1-3.7nmのMCM-41に吸着させたシクロヘキサン,ヘキサン,ベンゼン,メタノール等のDSC測定を行ったが,相転移は検出されなかった.これは,使用したMCM-41のメソ孔径が小さすぎたため,メソ孔中でこれらの物質の結晶(配向無秩序結晶を含む)が出来なかったためと思われる.現在,よりメソ孔系の大きいMCM-41の合成を進めている. 水-アルコール2成分系についてDSC測定を行い,メン孔中での氷の凝固点降下を観測した.水-エタノール2成分系についてはメソ孔内で水richな相とエタノールrichな相に相分離していることを示唆する結果を得た.
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