研究概要 |
液・膜界面を電気化学的に制御しうる水晶振動子マイクロバランスシステムを開発するための基礎検討を行った。水晶振動子を含む金属電極の表面にポリ塩化ビニル(PVC)膜を被覆し、この膜と水溶液界面を目的の興奮性膜界面とする。この場合、水晶振動子の共振周波数の変化(Δf)の液/膜界面電位差依存性を測定する上で次の2点が重要である。(1)液・膜界面での吸着によるΔfを正確に測定するために水晶振動子に被覆する膜の特性の最適化を図ること、(2)膜と水溶液の界面の電位差を外部から正確に制御すること。(2)のためには金属(水晶振動子)/膜界面の電位差を一定に保持しなければならず、膜相に疎水性の酸化還元対を加え金属電極上で可逆な電極反応を生じさせることにした。 可塑剤としてo-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)を、疎水性酸化還元対としてビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄錯体(DMFC)とその酸化体(DMFC^+)を用いた。PVC 0.2gを溶かしたテトラヒドロフラン5mlに、等濃度(5×10^<-3>M)のDMFCおよびDMFC^+と0.1Mテトラペンチルアンモニウム テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ホウ酸塩を含むNPOE溶液2mlを加えたものを、水晶振動子上の銀電極の上に薄く塗布し、風乾させた。成膜後、O.lM MgSO_4(支持塩)を含む水溶液に振動子を浸し、各種イオン(Cs^+、ピクリン酸イオンなど)の水相/PVC膜界面移動ボルタモグラムを測定した。上記条件で作成した厚さ約0.5mmの膜を用いれば、目的の液膜界面の電位を制御できることが分かった。 次に、イオンが水相から膜相へ移動・濃縮する電位を界面に印加し、移動したイオンによる重量変化をΔfにより検出する実験を行った。電気量から予想された重量変化は検出されず、膜組成の変化により膜の弾性を低下させて感度を向上させる必要のあることが分かった。
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