塩化セチルトリメチルアンモニウムイオン(CTA^+Cl^-)と2-プロパノールを含む水相(W1)、ピクリン酸(H^+Pic^-)を含むニトロベンゼンから成る液膜(M)および種々の添加物を含むもう一つの水相(W2)から成る3相系において生じる膜電位振動の機構を、液液界面イオン移動ボルタンメトリーを用いて明らかにした。上記液膜系で膜電位差が振動したとき、W1/M界面の電位差には周期的な変化は見られず、M/W2界面の電位差は膜電位と周じ振幅、周期で振動した。この結果は、膜電位振動がMとW2の界面の電位差の振動に起因することを示している。系に存在する個々のイオンの水/ニトロベンゼン界面イオン移動ポーラログラムを参照した結果、M/W2界面電位差の振動における振幅の上限は、H^+、Cl^-、Pic^-のMからW2への界面移動によって生じる混成電位に一致し、下限はH^+とCl^-のMからW2への界面移動による混成電位に一致することが明らかとなった。したがって、W2にCl^-、Br、l^-が共存するときこの順に振幅が小さくなったように、W2に共存するイオンの疎水性度が電位振動の振幅を決める。電位が上限から下限にシフトする理由は、H^<+ >の界面移動に伴うH^+Pic^-の界面吸着の飽和とH^+の輸送速度の減少に起因し、反対に下限から上限へのシフトは吸着していたH^+Pic^-の脱着と解離に起因する。したがって、H^+Pic^-の吸脱着に影響するような、界面吸着性の共存物や界面構造を変えるような物質は、振動周期を変化させると考えられる。以上のように、本研究は膜界面でのイオン移動、界面吸着、イオン対生成などの素反応にもとづいた振動機構の解明が、振動を利用したセンサーの応答機構を理解する上で重要であることを示した。
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