イオン交換体等の固相に目的成分を有色化学種として吸着・濃縮させ、その固相減光度を直接測定する固相分光法では、固相による吸収や散光による光強度の減少のため光量確保が重要となる。前年度までの研究で、光源に高輝度のハロゲンランプを、また投受光に光ファイバーを装着したマルチチャンネル検出器を用いれば、減光度値が4を越えるような低光量の領域における透過光測定が可能であることが確認された。またキャピラリー型白金セルを用いた場合、セル長を5cmまで伸長してもLambert則、Beer則の両法則がとも成立することが確認された。これら測光システムを用いて鉄(II)-フェナントロリン鎖生成系(バッチ発色系)に応用したところ、光路長4cm、試料溶液体積5cm^3の場合、その検出限界は0.15ngと非常に良好な結果を得られた。そこで本測光装置をさらに条件的に厳しい流れ系に関しても展開した。ライン内で発色させた目的成分をフローセル(内径1.5mm、光路長5mm)に充填した固相に吸着濃縮させ、その固相減光度を連続的にモニターすることを試みた。その結果、通常の分光光度計では光量確保のための特別な工夫をしなければ測定困難な、フローセル中の固相減光度を容易に測定可能であることが分かった。Cr(III)-Cr(VI)、Fe(II)-Fe(III)、V(IV)-V(V)等の酸化状態別流れ分析に適用したところ、これまでの分析法では得られなかった数種の興味ある知見を得ることにも成功している。以上の結果から、本研究により構築された測光システムが固相分光法の汎用性を高める上での重要な役割を果たすだけでなく、特に水試料中の微量成分分析が重要となる環境化学、地球化学等の分野で応用されることが期待される。
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