研究概要 |
1. リン酸の吸着ストリッピングボルタンメトリー リン酸は,モリブドバナドリン酸錯体としてグラッシーカーボン電極(GCE)上に吸着した。試料溶液中に過剰に存在するモリブデン(VI)酸の影響は,前濃縮電位を規制して防いた。電解液には,バックグラウンド電流の安定性の観点から塩酸を選択し,リン酸錯体の安定性を向上させる目的から10vol%のアセトンを加えた。モリブドバナドリン酸を-0.2V vs.SCEで5分間GCE上に吸着濃縮した後,03 V vs.SCEまで50mVs^<-1>の速さで電位を走査して得られた溶出ピークの高さからリン酸を定量した。検量線は,5〜100 ng ml^<-1>まで原点を通る直線となり,50 ng ml^<-1>での相対標準偏差(測定回数=5)は約4%であった。 2. ケイ酸の吸着ストリッピングボルタンメトリー GCEを用いたモリブドケイ酸のサイクリックボルタモグラムには極数のピークが存在したが,電解液のpHを5.0に調整することにより単一のピークとなった。モリブデン(VI)酸の妨害を防ぐためマスキング剤の添加を試みたところ,酒石酸ナトリウムが最適であった。モリブデン(VI)酸濃度は,ケイ酸錯体の吸着効率及びピーク形状から6×10^<-4>Mとした。モリブドケイ酸錯体を-1.4V vs.SCEで10分間GCE上に濃縮した後,-0.1Vvs.SCEまで50 mV s^<-1>の速さで電位を走査して得られたピークの面積からケイ酸を定量した。検量線は,1〜10 ng ml^<-1>で原点を通る直線となり,4 ng ml^<-1>での相対標準偏差(測定回数=5)は約2%であった。 開発した方法は,どちらも従来の吸光光度法に比べて感度が1〜2桁向上し,簡便迅速な新しい高感度定量法として極めて有用である。
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