本年度の研究実績 本年度は特に以下の2点の調査を遂行した。 (1) カタクリ種子の採集と運搬実験 調査地点とした北海道内の7カ所のカタクリ個体群において、各個体群のカタクリ50-100個体から種子を採集、アリ誘因器官であるエライオソーム量を計測、比較したところ、種子重に対するエライオソオーム量の比率に違いが見られ、7カ所の調査地点は2つのアロメトリー集団に分けられた。その要因を調べるため、2つのアロメトリー集団から代表的な調査地点を1カ所ずつ選び、それぞれの地点でワイヤーの重りを用いて、種子重-エライオソーム重の比率を操作した種子運搬実験を行った。その結果、エライオソーム比の変化に伴いアリによる種子運搬効率も変化し、2地点間でその変化の度合いに差が見られた。また成分分析用のエライオソームからの脂質分の抽出は本年度は実行できなかった。 (2) カタクリの種子散布成功率と動物群集構造の効果 既に北海道内のカタクリ群落(定山渓)において、カタクリ70個体について個体あたりの種子散布頻度、その後の実生定着率、アリや土壌節足動物相などの調査が済んでいたので、本年度はその比較のため、金沢市近郊の犀川上流部の河内谷カタクリ個体群を調査地点として設定し、定山渓と同様の調査をカタクリ35個体について行った。ピットホールトラップを用いてアリ密度や土壌節足動物相、また種子散布頻度を調査したところ、定山渓の調査地点に比べ、土壌節足動物相は希薄で散布アリ種も大きく異なった。また種子散布効率もわずかながら上がっていた。引き続き来春には各個体の実生定着率を比較する予定である。
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