昨年度に引き続き、外分泌腺構造のカスト間差の調査を継続した。特に昨年度の研究から明らかになった後胸側板腺のサイズ差に注目し調査した。後胸側板腺のカスト間のサイズ差は女王の形態と関係があった。有翅女王種では、そのサイズ差は顕著で、有翅女王は働きアリに比べて分泌細胞の数が非常に多く、それぞれの細胞サイズも大きかった。一方、無翅女王種のLeptogenys属ではいずれの種でも女王と働きアリ間の差は顕著ではなかった。一見有翅女王に似た胸部形態をもつが無翅であるOdontomachus属の1種では、有翅女王種とよく似たカスト間差を示した。後胸側板腺はアリに特有の分泌腺で、抗菌物質を分泌していると考えられているが、その機能はまだ明確ではない。この分泌腺の女王シグナルとしての機能を検討するため、有翅女王をもつOdontomachus属の1種の多女王コロニーで一部の女王の後胸側板腺分泌口を人為的に塞ぎ、働きアリの女王に対する行動を調査したが、塞がなかった個体との間で明確な違いはなく、シグナルとしての機能は明らかではなかった。
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