研究概要 |
アメンボ(Aquarius paludum)とヒメアメンボ(Gerris latiabdomins)の越冬後成虫を採集し、水面または湿紙上で飼育した。また、それぞれについて餌を充分に与えるグループと絶食グループとを作った。ヒメアメンボは絶食してもまたその上水面を奪っても60%以上の個体が飛翔筋を維持し、その一方で生存期間は条件間で違いはなかった。アメンボは絶食や水面消失により、飛翔筋を溶解させ、その分生存期間を延ばすことが分かった。 また、アメンボの幼虫から水面を全幼虫期間に渡って奪い、羽化後水面に戻すと雌の飛翔筋の溶解が促進され、産卵前期間が短縮された。 また、2,3齢期のいずれかに水面を奪うと逆に飛翔筋の溶解が抑制された。このように、アメンボは水面を奪われるステージにより、そこにとどまる戦略を取ったり、飛翔して別の水面に移動したりするいわば両賭け戦略を採用するものと考えられる。 一方ヒメアメンボは生息場所の消失によりもっぱら移動分散する戦略をとることが分かった。 また、卵を様々な時間乾燥させその後の生存率を調べると、一時的な水面から安定したものまで広く分布するアメンボが最も乾燥に強く、次に一時的な水面をもっぱら利用するヒメアメンボ、そして安定した水面のみを利用するハネナシアメンボが最も乾燥に弱かった。 また、アメンボやヒメアメンボでは孵化直前の方が、産卵直後よりはるかに乾燥に強かった。走査型電子顕微鏡を用いて卵の表面を観察すると、産卵直後の卵に見られた卵殻上の穴状構造が孵化直前には消失していた。この穴からの水分蒸散が乾燥耐性と関係しているのかもしれない。
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