本研究では北海道の針広混交林の6年間にわたる空間構造と林木の成長動態データを明らかにした。林木の成長動態における密度効果の制限は小さく、初期の更新動態が林分の構造を規定している可能性が示唆された。またギャップの空間的波及効果が、一部の構成種の共存に重要な影響を与えていることが明らかになった。これらの結果から、針葉樹林冠と広葉樹林冠がモザイク上に混交した林木群集では、撹乱体制が決定論的要因と確率的要因の組み合わせによって変動することが予想された。針葉樹と広葉樹の2タイプが林分でどのように共存するのかを便宜的に考えた場合、針葉樹林冠と広葉樹林冠の初期分布に関係なく針葉樹と広葉樹の共存が維持される条件は、針葉樹林冠のギャップ波及速度と広葉樹林冠の撹乱率、針葉樹更新率と広葉樹更新率の4パラメータの組み合わせによって表現できると考えられる。すなわち決定論的あるいは確立論的ギャップ形成過程や、更新ニッチの幅(更新サイトのcanopy edge依存性やギャップ依存性等)が針葉樹・広葉樹の共存状態に影響を与えていると思われた・自然条件下の様々な空間スケールで観察される針葉樹と広葉樹のパッチモザイク構造の生成には、針葉樹に特異的な空間的波及効果を伴う枯死パターンが重要な役割を果たしていることが考えられた。
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