本研究では植物ホルモンとして最も多面的な作用を持つオーキシンで発現が制御されるarcAをタバコ培養細胞BY-2からクローン化して解析してきた。WD-40 repeatと呼ばれる分子内繰り返し構造を有するarcA産物は、様々な生体制御因子を構成員とするGβファミリーに属する。WD-40 repeat構造はタンパク質問の相互作用のモチーフと考えられるため、arcA産物と相互作用すると思われるタンパク質を探索し、arcA機能同定のための重要な情報を取得ようと試みた。分子遺伝学的操作が可能となる酵母での解析を主に進めた。本年度は以下のような成果があった。 (1) 酵母に置いてarcAは1コピーしか存在しない。酵母arcAの破壊株を作製したところ、通常の増殖には影響の無いことが判明した。arcAは何らかの刺激による細胞の応答過程に関与しているかもしれない。 (2) 哺乳類においてarcAホモローグであるRACK1は活性化されたPKC細胞内レセプターであると報告されている。この可能性を酵母において検証するため、酵母においてやはり1コピーのみ存在するPKC、PKC1とarcAの相互作用をtwo-hybrid法で確かめた。PKC1は野生型と常に活性型となる変異型の両方で調べたところ、双方ともarcAとの結合を確認することができなかった。これは、両者が真に相互作用しないことを示す可能性も考えられるが、PKC1のような分子量の大きいキナーゼは核移行しにくいという可能性も十分考えられる。最近は細胞質で2遺伝子産物の相互作用を確認する新しいタイプのtwo-hybrid法も確立されているので、この新方式で確認する計画をしている。 (3) 分裂酵母のtwo-hybrid用ライブラリーが入手可能となった。酵母に於いてarcA相互作用タンパク質の探索を進め、植物に還元し得る、arcA作用機構分子モデルの解明を進めている。
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