研究概要 |
好気性好酸性細菌Acidiphilium属におけるZn-バクテリオクロロフィル(Zn-Bchl)合成系の解明を目的として、Acidiphiliumrubrumを材料として、バクテリオクロロフィル合成系のMg-キラターゼ相同遺伝子のスクリーニングを行った。Mg-キラターゼは、Bchl,DおよびHをサブユニットとする酵素であることが知られている。BchlおよびHにおいて保存されているアミノ酸配列よりプライマーを設計し、A.rubrumのゲノムをテンプレートとしてPCRを行ったところ、双方からBchlおよびHと相同性を有したPCR産物を得た。ゲノムサザンを行ったところ、これらBchlおよびH遺伝子はA.rubrumのゲノム中にそれぞれ1コピーづつ存在していた。これらをプローブとして、ゲノムライブラリをスクリーニングしたところ、bchlは、bchP-orf168-bchl-bchD-ort320-cnlのクラスター上にコードされていた。推定されるアミノ酸配列は、Rhodobacter capsulatusに対し、BChlは59.2%、BchDは40.5%のidentityを有していた。一方、A.rubrumのbchHは、bchF-bchN-bchB-bchH-bchLのクラスター上にコードされており、Rba.capsulatusのBchHに対して約55%のidentitiyが認められた。これらの遺伝子を、紅色光合成細菌Rhodobacter capsulatusのbchl,bchD,bchH各変異株に遺伝子導入し、機能相補検定を試みたところ、それぞれの遺伝子単独では相補が認められなかったが、各遺伝子をタンデムに連結し導入したところ、変異株を相補することが出来た。得られた相補株の光合成色素を解析した結果、Bchlの蓄積のみが認められ、Zn-Bchl aは検出されなかった。次に、A.rubrum細胞中のBchl中間体をHPLCで解析したところ、(1)Mg-キラターゼの反応生成物であるMg-プロトポルフィリンIX(Proto)およびそのモノメチルエステル体(ME)のみが蓄積しており、Zn-Protoの蓄積は認められない、(2)Mg-Proto ME以降のMg-ポルフィリン錯体の蓄積が殆ど認められない、(3)Mg-Proto MEからMg^<2+>が脱離したProto MEが多量に蓄積していることが明らかとなった。また原子吸光分析により、A.rubrumにおけるBchl中間体画分の解析を行ったが、Zn^<2+>の含量はMg^<2+>に比べて25%程度であったことから、Zn-ポルフィリン錯体も多くは蓄積していないことが明らかとなった。以上の結果より、A.rubrumでは、Mg-キラターゼがProtoにMg^<2+>を挿入後、Mg-Proto MEまで代謝され、Mg-Proto MEからのMg^<2+>の脱離および引き続くZn^<2+>の挿入によってZn一Bchl aが合成されることが強く示唆された。
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