1. Acidiphilium rubrum反応中心遺伝子周辺のDNA領域のクローニングと塩基配列の決定 A.rubrumゲノムDNAのコスミドライブラリーを作成し、すでに得られている反応中心遺伝子をプローブとして約11kbの周辺DNA領域をクローニングした。このDNA断片の塩基配列を決定したところ、反応中心遺伝子の上流部分に他の紅色細菌と同様にバクテリオクロロフィル合成遺伝子群(bchCXYZ)が見られた。 2. Acidiphilium rubrumの光合成遺伝子欠損株の作成および遺伝子相補実験 (1) 各種抗生物質に対する抵抗性を調べたところ、A.rubrumはクロラムフェニコールとアンピシリンに対し感受性であった。そこでA.rubrumの反応中心遺伝子をこれらの抗生物質に対する耐性遺伝子に置き換えたプラスミドを作成し、エレクトロポレーションおよび接合伝達による遺伝子導入・相同組み替えを試みた。 (2) 亜鉛クロロフィルを合成しない通常の光合成細菌Rubrivivax geatinosusおよびRhodovulum sulfidophilumの反応中心遺伝子を抗生物質耐性遺伝子に置き換えたプラスミドを作成した。また、R.gelatinosusの反応中心遺伝子欠損株に広宿主域プラスミドに挿入した同菌の光合成遺伝子を導入したところ光合成機能を回復した。1の結果から、亜鉛クロロフィルを利用する好気性光合成細菌A.rubrumにおいてそれを合成する酵素遺伝子は通常の光合成細菌のものと際だった違いはないことが示唆された。2(1)で作成したプラスミドによるA.rubrum反応中心欠損株の作成は、本菌が極端な好酸性であるため困難が予想される。平行してR.gelatinosus又はR.sulfidophilum反応中心欠損株を宿主としたA.rubrum反応中心遺伝子の発現および色素近傍アミノ酸に対する変異導入を行うことで亜鉛クロロフィルと色素タンパク質問の相互作用がより効果的に研究できると思われる。
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