研究概要 |
本研究では,液胞タンパク質の選択的輸送の分子機構の解明を目指し,私達が見出した液胞輸送レセプターPV72(カボチャ由来)を中心に解析を進めている.平成10年度は研究計画に沿って,下記の2点について解析を加えたので,その結果を報告する. 1. 輸送レセプターのシグナル結合領域の同定 輸送レセプターのルーメンドメインの様々な領域を大腸菌を用いて発現させたところ,多くの場合不溶性の状態で発現し,可溶化しても輸送シグナルとの結合能を持たないことが判明した.そこで発現方法を変更し,植物自身で発現させることにした.ルーメンドメイン全長のC末端にヒスチジンタグと小胞体残留シグナルを付加しシロイヌナズナで発現させたところ,可溶性でシグナル結合能を持つタンパク質が得られた.今後は同様の発現系を用い,様々な領域を発現させることにより,シグナル結合領域を明らかにする計画である.また,本発現タンパク質を用いて,平成11年度の研究計画である,3.ファージランダムペプチドライブラリーを用いた液胞輸送シグナルの解析,及び4.BIAcore2000を用いた分子間相互作用の解析を行う予定である. 2. 輸送レセプターの細胞内局在性の解析 ショ糖密度勾配遠心法で登熟カボチャ子葉を細胞分画したところ,輸送レセプターPV72は小胞体・ゴルジ体画分とPAC小胞(旧デンスベシクル)画分に局在することが判明した.さらに詳しく調べるために免疫電顕観察を行ったが,特異的なシグナルは見られなかった.輸送レセプターのルーメンドメインを緑色蛍光タンパク質(GFP)に置き換えたキメラ遺伝子をシロイヌナズナに導入し,得られた形質転換体を生体観察したところ,細胞内の小さな顆粒に蛍光が認められた.これは小胞体ではなくゴルジ体のパターンに類似している.今後は抗GFP抗体を用いた免疫電顕観察を行い,詳しい局在性を検討していく計画である.
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