1998年8月16〜26日に沖縄本島、石垣島、西表島で、9月29日〜10月8日に台湾で調査を行った。現地で行った計測および採集して持ち帰った資料を分析した結果、タイワンヒトツバハギに関して以下のことがわかった。 (1) 果実の直径は一個体内で3〜7mmの範囲内で連続的に変異する。サイズの頻度分布は5〜5.5mmをピークとする正規分布状になる。 (2) 中〜大型の果実は鮮やかな白で、果肉は厚く水分を含む。小型の果実は緑白色で、果肉は薄く水分は少ない。この形態も外見上は連続的に変異する。 (3) 1果実あたりの種子数は1〜6個で、4〜6個の場合が多い。種子が1、2個の場合には、果実サイズは小さい傾向がある。4個以上の場合は3〜7mmの範囲内で連続的に変異し、種子数が違っても果実サイズの分布に違いはみられない。 (4) 種子の生重は果実サイズが大きくなると統計的に重くなる(回帰分析(単回帰)の相関係数r=0.39、分散分析のp<0.0001;Spearmanの順位相関係数は0.366、p<0.0001)。 (5) 台東郊外での観察では、ヒヨドリ科のクロガシラPycnonotus taivanusが群がって果実を食べていた。ただし、どのサイズのものを食べていたかは不明。 これまで、タイワンヒトツバハギの果実にはさく果としょう果の2型があると記載されてきた。1と2の結果はこれと矛盾する結果となった。ただし、一個体内での果実の形態やサイズの変異が大きく、この変異にどのような生態学的意義があるのかは興味深い。3-5の事実は、今回の調査で初めて明らかにされた。 これらに加えて、コミカンソウ亜科植物の採集の際に、日本未報告のPhyllanthus tenellus Roxb.を沖縄本島などで発見した。標本調査の際に日本未報告のP.embergeri Haic.&Rossign.と思われる石垣島産の植物を見出した。
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