| 研究概要 |
北海道上部白亜系エゾ層群から得られた,石灰質ノジュールを大量に切断し,単子葉植物化石の探索を行った.単子葉植物の花化石として記載されているCretovarium japonicum (Stopes and Fujii 1910)について,多数の標本を元にその解剖学的特徴を明らかにした.特に花被ならびに心皮に入る維管束の特徴は単子葉植物のそれと似ていることがわかった.この化石と現生単子葉植物の花との比較の結果,永存性の花被等のMelanthiaceaeの特徴を持つことが明らかになった.本年度の研究でCretovariumに加え,永存性の花被を持つ単子葉植物の花の化石がもう一種明らかになった.形及び組織の特徴はCretovariumと明らかに異なる.これらの発見により白亜紀にMelanthiaceaeに近い単子葉植物の多様化が進んでいたことが明らかになった.これらは現在のところ単子葉植物の世界最古の化石である.また本年度の研究の過程で中生代以前からは世界的に例のない,単子葉植物の栄養器官の組織的に保存された化石が見つかった.現生の単子葉植物と比較して直径が太い部類であり,比較的背の高い植物であったと推測される.さらに研究をすすめることにより,白亜紀の草本植物の生活形態が明らかになることが期待される.
|
