2次光非線形有機化合物4-dimethylamino-N-methylstilbazolium tosylate(略称DAST)の成長方位制御について研究を行った。DASTは結晶のb軸方向に大きな電気光学定数を持つため、b軸方向へ大きく伸びた結晶の作製が望まれている。 前年度に確立した方法により十分精製したDASTのメタノール飽和溶液から除冷法によりバルク単結晶の作製を行った。結晶外形の詳細な観察により、これまで台形と考えられてきたDASTのバルク単結晶が歪んだ台形である事を確認した。X線構造解析により結晶軸方位と結晶の外形の比較を行い、外形と軸方向の1対1対応関係を決定した。これによりメタノール飽和溶液中からの結晶成長において、a軸の正方向、c軸の正方向への成長速度が他の方向より速い事を見い出した。これらの知見から、キャピラリーに種結晶を付け成長させる場合の、種結晶の取り付け方位を明確にする事ができる様になり、キャピラリー中に数十ミリ結晶を成長させる事が可能となった。現在、キャピラリーに代わるガラスセルを考案しb軸方向により大型の結晶を作製する研究を展開中である。 DASTのメタノール飽和溶液から結晶の作製を行う際、溶液中に微量の添加物を加える事によりDASTの晶癖変化を試みた。4-4'-dinitrobibenzylを数ppm添加する事により、成長速度が減少するため結晶の大型化に課題を残したものの、c軸方向への成長を抑える事に成功した。その結果バルク結晶と比較しc軸方向の長さに対して、ab面の大きな結晶を得る事に成功した。
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