研究概要 |
我々は、正負両方の超交換相互作用を持ち合わせた三元系プルシアンプルー類似体、(Ni_XMn_<1-X>)_<1.5>[Cr(CN)_6]および(Fe_XCr_<1-X>)_<1.5>[Cr(CN)_6]の磁気特性に関すして、これまで研究を行ってきた。本研究では、これらをさらに発展させた四元金属系(Ni^<11>_aMn^<11>_bFe^<11>_C)_<1.5>[Cr^<111>(CN)_6]・zH_2Oフェロ-フェリ混合磁性体を作製することで、従来の磁性材料にはない磁気特性を備えた新規磁性材料の開発を行った。本年度は、補償点(正の磁化と負の磁化がうち消しあって磁化がゼロとなる点)を二つもつ、二重補償点材料の設計および合成を行った。(Ni^<11>_aMn^<11>_bFe^<11>_C)_<1.5>[Cr^<111>(CN)_6]・zH_2O系において、Ni^<11>-Cr^<111>間の交換相互作用は+5.6cm^<-1>、Mn^<11>-Cr^<111>間は-2.5cm^<-1>、Fe^<11>-Cr^<111>間は+0.9cm^<-1>であることが各錯体のキューリー温度からわかっており、この三種類の交換相互作用を考慮した分子磁場理論的計算より、二重補償点を備えた混合比が存在することが示唆された。そこで、この予測を参考に合成を行った。その結果、(Ni^<11>_<0.234>Mn^<11>_<0.269>Fe^<11>_<0.197>)_<1.5>[Cr^<111>(CN)_6]・6H_2Oは、53Kと35Kに補償点を有する二重補償点材料であることがわかった。この錯体では、CN基の炭素側にCr^<111>、窒素側にNi^<11>,Mn^<11>,Fe^<11>のいずれかが結合しており、正と負の三種類の超交換相互作用したフェロ-フェリ混合磁性体である。この錯体では、Ni^<11>,Fe^<11>,Cr^<111>の平行な磁化とMn^<11>の反平行な四つの副格子磁化の温度依存性が各々異なることにより、二つの補償点を示すと考えられる。このように二重補償点を示す材料は、本研究が初めての例である。
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