本年度は、酸化温度を変えた試料と酸化後のアニール温度を変えた試料を作製し、長距離と序構造からの散乱を測定した。 酸化温度をそれぞれ850、950、1050、1150℃と変えて熱酸化膜を作製した。X線回折実験はつくばのフォトンファクトリーのBL4Cで行なった。測定は111ブラッグ点から延びるCTR散乱について行なった。どの温度においても酸化膜中の秩序構造からの散乱が110.45近傍に観測された。しかし、その表面垂直方向の強度分布は酸化温度が上がるに連れて広がっていった。これは酸化温度の上昇と共に秩序構造の表面垂直方向の秩序性が崩れていることを示している。ところが、秩序構造からの散乱の面内の強度分布の半値幅は酸化温度が変わってもほとんど変わらなかった。これは面内方向の秩序性が崩れていないことを示している。アニール温度についても同様の結果になった。950℃で酸化膜を約25nm成長し、その試料をそれぞれ850、950、1050、1150℃でアニール処理した。上記の様子がより顕著になって現れ、特に950℃以上で急激に表面垂直方向の秩序性が崩れていく様子が明らかとなった。それに対し、面内の半価幅はアニール処理を行なってもほとんど変わらなかった。これらは、酸化過程でできた応力が、温度が高くなるにしたがって酸化膜中の原子が動きやすくなっても、面内方向ではなく表面垂直方向に緩和していると考えることができる。
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