研究概要 |
圧電結晶を伝搬する弾性波は,圧電効果によりひずみと圧電場(圧電ポテンシャル)が結合して伝搬する波である.圧電場の結晶表面での境界条件は連続なので,結晶表面からしみでている.本研究は,しみだした圧電場をプローブとした新しいニアフィールド顕微鏡を提案することである.本顕微鏡は,しみだした圧電場が媒質の複素誘電率によって変化することを利用している.このため,複素誘電率顕微鏡とも呼べる.圧電寝を生成する手法として,最も手軽な弾性表面波(SAW)素子を使用した. 気相中で固体の複素誘電率を測定するための装置の開発を行った.光学用のZ軸ステージ上に弾性表面波素子を固定し,その上に測定対象である物質を置く.弾性表面波素子のみ上下させると,物質からの距離が約5μmの範囲で出力特性が大きく変化した.圧電場の侵入度が10μmであることを考慮すると,妥当な結果である.現在,試作した装置を用いて様々な物質の測定を行っている. 一方,弾性表面波センサは液体中でも利用可能である.液体中に物質がおかれた場合の測定ができるかどうか調べるため,液体フロー系により液体中のいおんっ分布の計測を行った.その結果,蒸留水→イオン溶液→蒸留水に変わる過渡応答がイオン種によって異なることが分かった.この結果より,イオン溶液中のイオン種とその濃度を推定できることを明らかにした.またこの結果は液相中でも気相中同様の測定ができることを示している. 今後,様々な物質を測定し複素誘電率顕微鏡を確立し,さらに弾性表面波素子ではなく専用のプローブ相互作用作成する必要がある.
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