[EuO薄膜試料の作成]前年に引き続き工業技術院物質工学研究所無機材料部の超高真空蒸着装置により、Gd添加EuO単層薄膜を作成した。最少Gd添加量を0.5at%まで減少させることに成功した(前年までは1at%)。またストイキオメトリーのよいサンプルと金属リッチなものをそれぞれ制御して得ることができるようになった。劣化を防ぐための表面コーティング材としてAl以外にフッ化カルシウムも使用し可視域での光学デバイスとして安定に使えるようにした(作成に関する論文を現在準備中)。 [基礎特性]前年同様、作成された試料の結晶性、表面状態およびGd添加量が測定され、よく制御された膜が得られていることが確認された。今年度はドープされたキャリアの起源の違いによって磁化に及ぼす影響に相違が生じるのかを意識して磁化測定を行い、Gd添加のものと金属リッチのもの(これは酸素欠陥によるキャリアドープに相当する)とでは、キュリー点の上昇のしかたに差異が生じることがわかった。これはドープ電子の平均自由行程が違うためではないかと考えている。光誘起キャリアによる影響については現在検討中である。 [光学特性]グラントムソンプリズムを用いた偏光解析装置を組み上げ、光誘起キャリアによるファラデー効果の検出を試みている。現在まだ光誘起による変化は信号強度が低いために測定されておらず、変調法の導入を検討中である。 [軟x線測定]SRRC(台湾)の円偏光放射光ラインを使用し、Gd添加EuO単層薄膜に対する3d-->4f内殻吸収スペクトルの磁気円二色性の測定を行った。液体ヘリウム温度から150Kまで温度を変化させ、磁気円二色性強度の温度依存性を測定した。その結果EuサイトとGdサイトの磁化強度の温度変化の差は少なく、Gdサイトと同様に120K付近までEuサイトの磁化は消えなかった。これはCdによってドープされたキャリアが広い範囲にわたって相互作用していることを示すものと考えている(軟x線磁気円二色性について論文投稿準備中)。
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