本研究の目的はX線画像の画質と被曝線量を撮影条件で制御するために、画質の物理的要因の定量値と被曝線量を撮影条件の関数として作成し、それらを組み込んだX線撮像システムの総合評価関数とそのソフトウエアを開発することである。 1.X線撮像システムの総合評価関数の開発 (1)人体を模擬したアクリルファントムに画像信号として低コントラストの被写体を埋め込み、それを撮影し、被写体コントラストと被写体の鮮鋭度を示すoverall MTF(modulation transfer function)の管電圧依存性を測定した。その結果、二つの定量値は大きく管電圧に依存することがわかった。 (2)散乱X線の被写体鮮鋭度に及ぼす影響を調べるために、X線管焦点のMTFを測定し、(焦点のMTF)×(画像検出器のMTF)とoverall MTFを比較した。その結果、散乱X線が各空間周波数で異なる影響を与えることがわかった。 (3)(2)の結果をさらに調べるために、散乱X線のMTFを求める方法とoverall MTFを直接線成分と散乱X線成分に分離する方法を開発した。その結果、低周波数領域で散乱線が大きく影響を与えていることがわかった。散乱X線量は患者の体厚と撮影距離に依存することから、これらは鮮鋭度に大きく影響を与えると言える。 (4)散乱X線によるボケを考慮したX線撮像システムの総合評価関数を開発した。総合評価関数には画質の物理的要因の定量値、被写体コントラスト、overall MTF、そして、皮膚呼吸線量の撮影条件依存性の関数を含む。 2.X線撮像システムの総合評価関数ソフトウエアの開発 総合評価関数ソフトウエアをパーソナルコンピュータ上で開発した。 3.今後の展開 本研究の結果から患者の体厚と撮影距離は鮮鋭度に大きく影響を与えることが示唆された。したがって、実際の医療に適用するためには、患者の体厚と撮影距離を考慮した総合評価関数を開発する必要がある。
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