本研究は、大域的な流れとは異なるスケールを持つ現象が、考えている領域の境界近傍において発生し、それが大域的な流れに影響を与えることによって複雑な挙動を示す多重スケール問題に対して、現象の代表スケールが異なる領域毎に分割する領域分割法を適用した数値解析手法を提案するものである。平成10年度の研究により、以下のような成果が得られた。 ●全体領域を現象の代表スケールが異なる領域毎に分割し、それらの領域間で代表スケールの違いを考慮して解を接続する数値解析手法の定式化を行った。スケールの異なる領域間の境界上の解の接続には、境界上に独立な区分的定数となる流速場を定義し、Lagrange未定乗数法を用いる手法を提案した。本手法により、数値計算はあらかじめ境界近傍の領域について周期境界条件を導入した計算を行い、その結果を応力境界条件のデーターベースとして大域的な流れの計算において用いる手法が得られた。 ●スケール毎に領域分割された問題に対して、筆者等が開発した正規化気泡関数要素と陰的時間積分を用いた有限要素スキームを適用した。この有限要素近似は、Lagrange未定乗数法を用いた境界条件や、周期的境界条件の設定が容易な手法であり、新たな近似等を導入することなく本研究で考える多重スケール問題の領域分割解法にこれを適用することができた。
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