本研究では溶融金属が凝固する過程の表面張力変化を考慮して、三次元マイクロ構造物の適正な力学的評価と最適構造設計のための手法について検討した。まず、三次元マイクロ構造物構築に用いられるPb/Sn合金の溶融状態から凝固する過程における表面張力、凝縮率、線膨張係数について検討し、Pb/Sn合金の力学特性に関する実験を行った。さらに、この結果を用いた計算機による三次元モデル実験より、表面張力の変化によって三次元マイクロ構造物が組立つメカニズムを解明した。そして、望みの三次元マイクロ構造物形状を得るのに最適な合金の量などの条件設定法いついて検討した。これにより得られた成果を以下に示す。 1)Pb/Sn合金の引張り・圧縮特性などの基本的な力学特性を把握した。Pb/Sn合金の力学特性には大きな温度依存性、ひずみ速度依存性があり、これは、従来のマクロ構造物よりもマイクロ構造物に大きく作用することを示唆できた。このことから、合金の力学特性をマイクロメカニクス的見地から把握する必要性を指摘できた。 2)Pb/Sn溶融金属の表面張力や合金の力学的特性などの基礎データを定量化し、三次元有限要素解析コードに組み込み、三次元マイクロ構造物の計算機モデル実験を行った。これにより、三次元マイクロ構造物が組立つメカニズムを解析的に解明し、実際のマイクロ構造物を想定した構築シミュレーションがある程度可能であることを示した。そして、さらに具体的な構造物へ適用するためには、合金の表面張力の変化や、凝縮率、線膨張係数の温度依存性などのより詳細なデータ集積が必要であることを指摘できた。
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