研究概要 |
本研究は電子パッケージ薄膜配線のエレクトロマイグレーション(EM)損傷支配パラメータを特定し,これを用いたEM損傷の普遍的強度評価法を開発することを目的とする。本年度は以下の研究を実施した。 (I) 配線構造を考慮したEM損傷支配パラメータの定式化 薄膜配線の主な原子拡散径路として結晶粒界拡散と粒内の格子拡散が挙げられる。多結晶配線においては結晶粒界拡散が支配的であり,バンブー配線においては格子拡散が支配的である。EMの原子拡散理論式に基づき微小要素における原子流束の収支から流束の発散を導出することにより,配線構造に応じたEM損傷支配パラメータの定式化を行った。なお,多結晶配線の場合においては結晶粒界組織構造におけるEM損傷モデルを構築して微小要素に組み込んだ。以上によりEM損傷の影響因子を全て含んだ関数として多結晶およびバンブー配線の支配パラメータを特定した。 (II) 多結晶配線における支配パラメータの実験検証 10〜50μm幅の折れ曲がる多結晶アルミ薄膜配線を対象として一定時間加速通電試験を行い,EM損傷支配パラメータによるボイド形成の予測値,すなわち同配線の強度評価結果と実験値を比較した。配線の強度評価にあたっては,設定した配線形状,基板温度,入力電流密度に対して数値計算を行い,配線全体の電流密度,温度およびそれらの勾配を求め,多結晶配線のための支配パラメータ関数に入力した。配線の物性値は加速試験に供される配線を用いて観察および実験により求めた。配線全体で同パラメータの分布を求め,設定した配線形状,環境でのEMに対する強度評価を行った。全ての評価結果と実験値の間には線形な相関関係が見られ,よく一致した。これより,多結晶配線におけるエレクトロマイグレーション損傷支配パラメータの有効性を実験により詳細に検証した。
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