研究概要 |
本研究ではクリープ損傷を精度良く評価する目的から,原理的にいかなる条件,材料に対しても解析可能な分子動力学法を用い,損傷力学の概念と結びつけることによって実機のクリープ時間と同じスケールでのシミュレーションを可能にする解析アルゴリズムを開発する.その手始めとしてまず本年度は金属材料の損傷過程を分子動力学法によってシミュレーションした. 解析対象を室温の鉄とし,単調引張りにより結晶粒界に生じる損傷過程のシミュレーションを行うための分子動力学法を用いた計算機プログラムの開発を行った.分子動力学法に用いるポテンシャルとしては計算の簡単化のため二体間ポテンシャルであるMorseポテンシャルを採用し,結晶粒界としてはΣ=5界面を考えた.界面と垂直方向に単軸引張りを行う目的から界面を含むユニット・セルを考え,界面と平行な端面をチャック層として原子の変位を強制的に変化させることによって単軸引張り変形を与えた.またそれ以外の面に関しては周期境界条件を適用した. 本年度は分子動力学シミュレーションを行うための計算機プログラムの開発を主な目的としたためシミュレーションでは原子を500個程度しか考えなかったが,単調引張りにより界面に生成するボイドをシミュレーションすることができた.また引張り過程における系全体の平均応力とひずみ,ならびに弾性係数を評価した結果,粒界における損傷の発達にともない応カ-ひずみ線図ならびに弾性係数におよぼす影響を検討することができた.
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