前年度に行った多数の球状欠陥が導体中に3次元的にランダムに分布する場合の直流電位場解析の結果から、欠陥分布を欠陥の体積密度(単位体積当たりに存在する欠陥の個数)と半径の3乗平均の積の値で代表させた場合、その代表値は、欠陥による電位差の増分と比例関係にあり、また、その比例定数は、欠陥の半径分布にほとんど存在しないことが明らかとなった。そこで、本年度は、実際にクリープ疲労損傷を受け、内部に多数の球状欠陥が発生している耐熱鋼対して直流電位差法を適用し、欠陥分布-電位差増分関係式を用いた欠陥分布の評価手法の妥当性について検討した。 まず初めに、損傷材の断面において欠陥を顕微鏡で観察し、断面上における欠陥の面積密度(単位面積当たりに存在する欠陥の個数)と長さ分布を測定するとともに、それから実際の材料内部における欠陥の3次元的な分布(体積密度と半径分布)を推定した。次に、その推定分布と前年度の解析結果から得られた欠陥分布-電位差増分関係式を用い、その材料に直流電位差法を適用した場合の電位差増分を予想した。その結果、予想された電位差の増加レベルは比較的高く、特別な測定装置を用いなくても一般の計測器で十分に測定可能であることがわかった。 さらに、数種類のクリープ疲労損傷材に対して実際に直流電流を流し、電位差測定を行った。その測定結果を前述の予想値と比較したところ、両者は良く一致しており、本研究で提案した欠陥分布の評価手法の妥当性が示された。
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