研究概要 |
破壊じん性や衝撃強度の改善のために内部に微小なゴム相を分散した高分子材料が多く用いられている.このようなゴム強化ポリマー(ポリマーブレンド,ポリマーアロイ)では,応力下のゴム相空洞化(キャビテーション)による局所的等三軸応力場の抑制と,それに伴なうマクロせん断変形の発生が重要な役割を果たす.本研究では,この現象に対して力学的解析モデルを構築すること,および超音波伝ぱ特性評価によりゴム強化ポリマーの力学的特性に及ぼすゴム相の効果を調べることが目的であった.本課題に関する前年度の研究では,等三軸応力下のゴム粒子-母材複合系の厳密有限変形解析に空洞形成の分岐解析モデルを適用して,キャビテーションによる母材中の応力場の変化を明らかにした.その結果,有効な理論解析を行うためには,微小ゴム相の材料特性に関する知見が重要であることが判明したが,サブミクロン寸法のゴム相が,通常のバルクのゴム材と同様の特性を有していると見なすのは妥当ではない.そこで,超音波伝ぱ特性の測定に基づくゴム強化ポリマーの力学的特性の解明と,微視力学(マイクロメカニックス)理論による分散ゴム相の弾性特性評価を行った.具体的な研究成果は以下のようにまとめられる. 1.ゴム強化メタクリル樹脂に対して,超音波縦波,横波の音速と減衰係数を波形スペクトル解析により評価した.これより,音速と減衰係数の周波数依存性,ならびにゴム粒子含有率への依存性を明らかにした. 2.超音波音速測定より,ゴム強化メタクリル樹脂の体積弾性係数,横弾性係数を算出し,弾性特性に及ぼすゴム粒子含有率の影響を明らかにした.また,微視力学理論モデルを利用して,ゴム強化メタクリル樹脂の弾性係数から,内部に分散したゴム粒子の動弾性特性の評価を行った.直接的な測定が困難なサブミクロン寸法のゴム粒子に対して弾性特性を評価できたことは意義深いものと考えられる.
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