前年度はCFRTPのモードIとモードIIの混合モード下における層間はく離き裂進展について検討した。そこで本年度は、ほぼ単結晶材料のき劣進展挙動が観察できると考えられる一方向性けい素鋼板を用いて疲労き進展試験を行い、き裂先端のすべり変形を超高分解能の原子間力顕微鏡よって観察した。このとき、比較的き裂進展速度の遅い領域において生じるモードIとモードIIの混合モード型き裂進展の機構について考察を行った。また、画像処理によってき裂先端近傍変形場の同定を試みた。その結果、疲労き裂先端で生じるすべり変形は、必ずしも連続的でなく離散的であることが判明した。また、低進展速度域ではき裂進展駆動力が小さいために、き裂先端に上下対称に存在する2つの優先すべり系を同時に作動することができず、どちらか一方のすべり系が集中的に作動するために、き裂が混合モードで進展することが判明した。さらに、すべり変形が一方に集中することでひずみ硬化が生じ、その方向へのすべり変形が生じにくくなってき裂が屈曲することが明らかになった。
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