研究概要 |
圧延ロール・歯車・軸受などのように物体表面が互いに接触しながら相対運動する場合に発生する典型的な表面疲労損傷の一つにピッチングがある.この問題には接触荷重,部材の材料および形状,潤滑条件など,さまざまな影響因子が直接あるいは互いに干渉しながら影響を与えている.本研究は,その一つ一つの影響因子の影響を定量的に評価するために接触応力下の3次元ピッチングき裂の進展経路自動予測プログラムの開発を目的とする.申請者は現在体積力法を用いた接触応力下の3次元表面き裂の応力解析プログラムを使用しているが,実際のピッチング現象の解析のためには,表面に対して浅い傾き角のき裂を解析できるように改良する必要があり,また影響因子の影響を系統的に調査するためにはプログラムの自動化が必須である.そこで,本年度は,(1)ピッチングの詳細な形状を捉えるため,ピッチングの断面切り出しおよびその画像データの集積システムを構築することと,(2)自由表面近傍における体積力対の取り扱い方法を確立するのことを目標として研究を遂行した.第一の目標に関しては,TFM・SEM観察用試料作製用の研磨治具を購入し,当該研究室所有の自動研磨装置で使用可能なように改良することによりピッチング断面の切り出しを効率的に行えるようになった.さらに,顕微鏡にデジタルカメラを取り付けるアタッチメントを購入しコンピュータによる断面の画像管理が可能になった.第二の目標に関しては,自由表面によるき裂の特異性の変化の問題として現在でも破壊力学の分野では議論されており,有効な手段を考案するために来年度の目標として研究を継続する.
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