平成10年度は、弾塑性材料中の定常進展き裂問題の解析のための有限要素法の定式化とプログラムを作成した。定式化は、材料非線形性だけでなく、大変形による幾何学的非線形性まで考慮して行った。き裂先端に埋め込まれた座標系により、変位、ひずみ、応力などの諸量を表し、材料点の応力を無限遠方からひずみに対して積分することにより計算する。さらに、応力平衡状態を求めるための収束計算を行う。変形前後の物体形状の違いによる幾何学的非線形性を考慮した解析では、Up-Dated Lagrange標記に基づく応力積分と変形後の形状に対する応力平衡状態を導くための収束計算を行う。それらに基づく2次元と3次元の定常進展き裂問題のための有限要素法プログラムを開発し、2次元問題の場合の詳細解析を行った。 大規模降伏状態下の2次元静止き裂とモードI定常進展き裂の解析を行った結果、応力やひずみの特異性、き裂開口変位に大きな違いが認められた。また、定常進展状態で幾何学的非線形性を考慮した場合と考慮しなかった場合の解析結果の間に大きな違いは認められなかった。従来より、き裂後方の再負荷域の存在が指摘されているが、今回の有限要素法による2次元解析でも確認できた。従来の解析では、無限な広がりを持つ場合やいわゆる小規模降伏の場合に対して裂後方の再負荷域の存在が指摘されていたが、今回の解析により大規模降伏状態に関してもその存在が確認できた。詳細な3次元き裂解析は平成11年度に実施する。
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