研究概要 |
当該問題について,まず,2次元短繊維強化複合材中の繊維が試料表面から観察可能と仮定して,いわゆる‘可視部分'の長さの分布を求めるための式を誘導した.可視性を持った繊維と透光性を持った母材で構成された短繊維強化複合材を表面から観察すると,観察者に対して奥にある繊維に手前にある何本かの繊維が重なって,奥にある繊維はいくつかに分割されて観察される.'可視部分'とは,重なった繊維で区切られた区間を示す.式の誘導にあたり,(1)注目する繊維に重なる繊維の本数を離散数とし,これを連続数として取扱ったときに生じる問題,すなわち可視部分の長さが繊維長さに近くなるとその確率密度関数が無限大に発散する問題を解決した.(2)繊維長さが分布を持っても可視部分の長さ分布を求めることができるように配慮した.さらに,ガラス短繊維強化ナイロン6を表面から超音波顕微鏡を用いて観察し,繊維の可視力部分の長さを測定し,誘導した可視部分の長さ分布を求める式を利用して,逆に,繊維長さの分布を求めた.また,ガラス短繊維強化ナイロン6内部からガラス繊維を抽出し,長さ分布を求め,超音波顕微鏡の観察結果から推定した繊維長さ分布と比較検討を行い,本研究で提案した手法の有効性を検証した.短繊維強化複合材中より繊維を抽出できるときには,抽出した繊維の長さを測ることが,最も正確な繊維長さ分布を求める方法であることは当然であろうが,金属基あるいはセラミックス基複合材のように,世の中には繊維を抽出できない複合材も多数存在し,そのような短繊維強化複合材で繊維長さを測定したいときには,本研究で提案した手法が有効であると考えられた.
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